工場街ヴェローナに或るハヌマーン
※舞台『泣くロミオと怒るジュリエット』のネタバレあり。
それは大学時代に片想いしていた同期からオススメされて以来、私の心の奥に刺さっているバンド。
曲を聴けば当時の苦酸っぱい恋心を思い出すのは確かだけど、もうそんなことも関係ないくらいに私はボーカル*2山田亮一さんが紡ぐ叙情詩的な言葉たちと中毒性のある予測不可能なメロディを既に自身の生存要素として取り込んでしまっている。
昨日は、眠れずにいたら面白いタグを見つけたから私も参加。
#好きなバンド10組晒すと好みが分かる
— こー@So happy (@genichi505) 2020年2月24日
サカナクション
サンボマスター
10-FEET
ハヌマーン
相対性理論
NICO Touches the Walls
BUMP OF CHICKEN
KANA-BOON
androp
マキシマム ザ ホルモン
そしてこれをきっかけになんとなく「ハヌマーン」と検索して、そこでたまたま出てきた『幸福のしっぽ』という彼らの楽曲に重なる何処かの誰かのエピソード*3を読んだらいっきに感情と思考が動かされてしまい、そのまま歌詞カードを開いて該当曲を聴き始めた。
“また転んで 日々が行く『なんで僕だけ』と呟く
運命って言葉が浮かぶ 手も足も出せずに笑う
(いつも)”
あろうことかそこには、私がついこの間観た舞台『泣くロミオと怒るジュリエット』*4の主人公ロミオ*5がいた。
まさか、でも聴けば聴くほど、思えば思うほど、もうこれは間違いなく、関西にある鉛色の工場街ヴェローナのカストリ屋台で働きながら明日を模索して生き、そして死んでいった、真面目で哀れな青年ロミオの曲でしかなかった。
“伝えられない事ばかりが 性懲りもなく溢れ出す”
“それでもまだ人間でいたくて
明日もまた同じ場所へ 同じ手段で行く
それでもまだ人間でいたくて
彼らの理不尽さも 品性の無さも受け入れてかなきゃ”
上に書いた歌詞が、ジュリエットに出会う前。
それから次の歌詞は、ジュリエットに出会った直後のロミオ。
“ようやく掴んだ幸福のしっぽ
もう離すもんか幸福のしっぽ
お前が逃げるせいで散々な目にあった
想えばお前のせいで信用を失くした”
彼はようやく、ジュリエットという名の生きる希望を見つけた。
それなのにロミオは、すぐに"すべて"を失い、自らこの世を去ってしまう。
“あくまで只の人間であって ごめんよ
もう自分でなんていたくもなくなったよ
さよならもう夢でさえ逢えないアナタ
伝えられなかったまま 行間の中で腐敗する愛”
そして個人的には、さらに下の一文が最も彼の最期にリンクしていて、とにかくとてもつらくなった。
“近づいてたつもりが 高速ですれ違っていただけ”
ロミオとジュリエット。ロミオと幸福。どちらのことにも当て嵌まって、底無しに悲しくなる。
愛した人と、幸せな日々を、ただ生き続けることがこんなにも難しいことだとは知らなかった。当然ではなかった。「生」は"苦"だ。
ちなみにこの『幸福のしっぽ』の終盤には、今回の舞台とは違う結末を迎えるかもしれないロミオがいて、でも最後の最後の一文で私は彼を抱きしめたくなったから、気になる人がいたらぜひ近くのCDレンタルショップでハヌマーンの『RE DISTORTION』というアルバムを探してみてほしい。*6
最後に、同じアルバムの中に入っている『リボルバー』という曲も、
“そういちいち怒鳴るなって 誰だって誰かを殺したい”
から歌詞が始まって、最後にはまるで『泣くロミオと怒るジュリエット』の舞台であるヴェローナという街そのものが歌っているかのような展開を迎えるからぜひぜひ聴いてほしい。そしてもし興味があるなら、これは歌詞カードだけじゃなくて必ず、曲も最後まで聴いてほしい。『泣くロミオと怒るジュリエット』にエンディングテーマがあるとしたら、それはこの曲以外にあり得ないとさえ思う。ぜひ。
〜おまけ〜
ハヌマーンのアルバム『RE DISTORTION』に収録されている楽曲をすべて舞台『泣くロミオと怒るジュリエット』の登場人物に勝手に当て嵌め、妄想してみた。
・Nice to meet you:ロミオとジュリエットの2人。舞台のオープニングテーマにも合うと思う。
・Fever Believer Feedback:ロミオ。真面目に働きながらも人間の愚かさや人生への虚無を心に抱く。
・今夜、貴方とマトンシチュー:マキューシオ。狂ったフリをして世界の儚さを嘆く。
・ワンナイト·アルカホリック:ベンヴォーリオ。生きてヴェローナを出た数年後のある日。
・RE DISTORTION:マキューシオ。真理を掴んでいるがゆえに世の中を蔑む。
おしまい
*1:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%8C%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%B3_(%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89)
*2:Gt.&Vo.
*3:「それでもまだ、人間でいたい」http://ongakubun.com/archives/11565
*4:舞台『泣くロミオと怒るジュリエット』公式HP https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/20_romeo-juliet/
*5:演じたのは私が愛してやまない自担、ジャニーズWEST桐山照史くん
*6:インターネットの公式歌詞サイトには掲載がなかったので、TSUTAYAのレンタルCD在庫検索ページを貼っておきます。→https://store-tsutaya.tsite.jp/item/rental_cd/195156399.html